ちゃっきりぶしの歌詞

(原本のまま全30節)
作詞:北原白秋
作曲:町田嘉章

1. 唄はちやっきりぶし、
男は次郎長、
花はたちばな、
夏はたちばな、
茶のかをり。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
2. 茶山、茶どころ、
茶は縁どころ、
ねえね行かづか、
やぁれ行かづか、
お茶つみに。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
3. 駿河よい国、
茶の香がにほうて、
いつも日和の、
沖は日和の
大漁ぶね。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
4. さァさ、また行こ、
茶山の茶つみ、
日本平の
山の平の
お茶つみに。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
5. 日永、そよかぜ、
南が晴れて、
茶つみ鋏の、
そろた鋏の
音のよさ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
6. 昔や火のなか、
草薙さまよ、
いまは茶のなか、
茶山、茶のなか、
茶んぶくろ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
7. 山で鳴くのは
やぶ鴬よ、
茶つみ日和の、
晴れた日和の
目のとろさ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
8. 帯はお茶の葉、
鴬染よ、
あかい襷の
そろた襷の
ほどのよさ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
9. 歌へ、歌へよ、
茶山の薮で、
ほれてうたわにや、
そろてうたわにや
日がたたぬ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
10. どんどどんどと
積み出すお茶は、
茶摘み娘の
歌で娘の
摘んだ葉茶。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
11. お山見れ見れ、
あの笠雲を、
ねえね着て出や、
けさは着て出や、
菅の笠。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
12. 龍爪雲れば、
港は風よ、
富士の芝山、
明けの芝山
雲ばかり。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
13. 出たよ、ぼんやりこと
月待ち雲が、
さきの茶山の
宵の茶山の
はしに出た。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
14. お茶は清水へ、
お月さんは山へ、
晩にや蜜柑の、
ぬしと蜜柑の
花のかげ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
15. なにをくよくよ、
お茶揉み、葉揉み、
月に狐も
浮かれ狐も
揉みに来る。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
16. 夏ぢゃ、五月ぢゃ、
新茶ぢゃ、粉茶ぢゃ、
やァれ、えれえれ、
しもて、えれえれ、
ごせっぽい。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
17. お茶の茶山の
茶の木のなかで、
おまっち何というた、
いつか何というた、
お茶山で。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
18. 茶の實とんとろりと、
しめ木にかけて、
かはいおまっちの、
じつはおまっちの
髪あぶら。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
19. せめて、賎機、
浅間さまよ、
とんとからりとも、
ついぞからりとも
沙汰はない。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
20. しづや賎機、
浅間さまの
しろいお馬よ、
三保へお馬よ、
なぜ逃げた。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
21. 焼津、やかれつ、
ねて見つ、興津、
さった女房を、
かはい女房を、
三保の松。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
22. 三保の羽ごろも、
根上り松よ、
いまはお藷の
干したお藷の
蔓ばかり。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
23. 三保の海苔舟、
けさまだ寒い、
せめて棹さそ、
連れて棹さそ、
逆さ富士。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
24. 久能で思へば、
月夜のばらす、
いつも苺の
しろい苺の
花が咲く。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
25. おまへ、龍華寺、
蘇鐵の花よ、
いつか忘れた、
ほろと忘れた
頃に咲く。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
26. 積めよ、積め積め、
米松、井桁、
濱はざさんさ、
松にざさんさ、
浪の音。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
27. なにをぼったってる、
吐月峯か、おぬし、
とんと煙管で、
去なにや煙管で、
はたいたろ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
28. 今夜来なけりゃ、
手越のお灸だ、
きっと阿部川、
待つに阿部川、
きなこもち。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
29. ほれて通へば
田圃も畦も、
わたしゃ首ったけ、
とんと首ったけ、
じるっくび。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
30. やっさ、もっさよ、
お茶屋の前は、
まっちゃ、おまっちゃ、
あっちゃ、おまっちゃ、
はりこんぼ。
ちやっきり ちやっきり
ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。